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スマホを捨てたい子どもたち

 わたしは屋久島のニホンザルとアフリカのゴリラを現地で研究しながら、人間とは何か、どう生きるべきかを考え続けてきました。たとえば、サルはすぐ勝ち負けを決めることで争いを回避します。弱いほうが身を引いて、強い方が独占する、非常に効率的なやり方です。一方でゴリラは負けずぎらいなので、勝ち負けがつく前に争いを回避できるよう、第三者が仲裁に入ります。いまの人間社会は、勝ち負けと効率性を求めるサル社会に近くなっています

 人間と霊長類(人間にもっとも近い動物)の相違だけでなく、人間とAI(人工知能)との違いも理解する必要があります。人間は、身体で情報を受け入れ、知能や意思を使って情報処理して判断してきました。でもAIには身体も意識もなく、知識だけを組み合わせて、何らかの「回答」をはじきだします。人間は適応力が高いために、そうした「AIの判断」を受け入れてしまいます。AIに頼る人間が増えるほど、人間の直感を使う機会を失うため、情緒的社会性(感情のコントロールや他者との協働をおこなう能力)を失いつつあります

 いま人間社会に必要なのは、ひとびとが均一にまとまるのではなく、それぞれが個性を持った存在であると、お互い尊重し合うことです。人間社会が発展してきたのは、「自分とは異なる相手」との出会いによって新しい気づきを得ることができたから。異なる相手と対面し、認め合うことを、いまあらためて実践していくべきだと思います。

(やまぎわ・じゅいち(山極壽一) 『クーヨン』(2025年7月号)「子どもの本の学校」(P.43)より)

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投稿日:2026年07月08日